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あいちの中小企業のインターンシップカイゼン講座

近年、高校生を対象にしたインターンシップを実施する企業が増加しています。
高校生向けインターンシップをどのように進めるべきか、既に浸透している大学生との取り組み方の違いやその意義について、キャリア教育プログラムのコーディネーターと一緒に聞いてみました。

今回、取材にご協力いただいた
会社はコチラ
【製造業】玉川工業株式会社
業務部 総務グループ主任 河村健一さん
※玉川工業株式会社では総務グループが人事を兼任されている
創業:1949年
所在地:愛知県春日井市神屋町字地福1218-18
社員数:60名(2024年10月時点)
事業内容:航空機部品、宇宙機器部品、防衛関連部品、油圧機器、各種試験装置等の製作及び組立
URL:https://www.tamagawa-kk.co.jp/index.html
玉川工業株式会社
【建設業】有限会社浅野保温
代表取締役 浅野朋幸さん
創業:1966年
所在地:[本社]愛知県丹羽郡扶桑町南山名前ノ浦59-1
社員数:26名(2024年10月時点)
事業内容:配管およびダクトの保温、保冷、防露工事各種配管形状に対する加工
URL:https://www.asanohoon.co.jp/
有限会社浅野保温
コーディネーター
一般社団法人アスバシ
小柳 真哉 氏
学校と地域をつなぐ専門家「キャリア教育コーディネーター」として、愛知県内の小学校・中学校・高校・大学にて環境学習、インターンシップ、課題解決型学習講座、探究学習等のキャリア教育プログラムのコーディネートを行っている。
一般社団法人アスバシ小柳 真哉 氏

高校生向けのインターンシップをはじめたキッカケと現在―――

インタビュアー

はじめに高校生向けインターンシップを始めたキッカケと現在の状況を教えてください。

玉川工業㈱
河村さん

工科高校側から依頼され、1日だけの工場見学のような形で受け入れたところからスタートし、現在は1~3日間を目安として状況に合わせて行っています。
内容としては、まずは会社概要を紹介し、製造の行程を順番に見学しながら、各担当者が実際の作業について説明しています。安全上、製造中の部品に触るのは難しいところがあるので、機械のボタン等、簡単な操作体験などを行っています。最後には、参加した生徒さんに内容をまとめてもらい、発表していただいています。その後は、座談会を行っています。

㈲浅野保温
浅野さん

新卒採用を模索する中で、アスバシさんからインターンシップの提案を頂いたのをキッカケに取り組み始めました。
地域への貢献活動として考えていましたが、2、3年目で1人が入社してくれたので今でも続けています。内容としては、はじめに私から「社会人とは」や業界、自社の特徴や強みなどをお話します。その後は部品の簡単な図面の作成に挑戦していただいたり、配管工事の現場の見学にも行きますね。

(一社)アスバシ
小柳さん

(一社)アスバシ小柳さん

玉川工業さん、そして浅野保温さんでは高校生向けのインターンシップを順調に進められていますが、日本でのインターンシップというシステムは大学生向けからスタートしたので、どうしても就職活動の延長というイメージが強いんです。
ただ、高校生を対象にしたインターンシップの場合、大学生と違って専門性が決まっていない中で進路を決めるというのは難しいんです。そのため、自分たちの住む地域にこんな会社があるだとか、こんな分野の仕事があるんだよとか、会社ってどんなところだろうとか、高校生が自分の進路を考えていくキッカケとしての学びを重視するのが流行になっています。
これから高校生向けのインターンシップを始めようとしたときに、これまで接触がなかった高校へ急に打診するのはハードルが高いです。そんな場合には以下の方法をおススメします。
①弊社アスバシやNPO法人アスクネット等の学校と地域をつなぐキャリア教育コーディネーターなどに相談する。 ②求人票を出している場合は、インターンシップを受け入れている旨を先生に伝える。 ③ひと育ナビにもある「あいち夢はぐくみサポーター」を利用する。 インターンシップでは即採用など、すぐに結果を求めるのではなく、先生に自社のことを知ってもらうことを優先したほうが良い結果が生まれやすいです。
また、高校生のインターンシップには、公募型と必須型の二種類があります。

【公募型】生徒が自分で応募するインターンシップ
【必須型】学校の授業の一環で参加するインターンシップ

いずれの場合でも、大切なのは高校生の興味を惹くキッカケを作ることです。
募集時の資料に、会社の説明を詳しく書きすぎてしまうと、難しそうな会社という印象がついてしまうので、高校生がすぐにイメージできる内容や、関心を持ちやすい言葉に置き換えることが大切です
(例)
・部品等製造企業 有名な〇〇の部品を作っている会社
・リサイクル系企業 アップ サイクルでSDGsに取り組む
・福祉サービス系企業 医療と福祉の一体化を目指す
可能な限り短い「キーワード」で端的に魅力を伝えると、高校生の目につきやすい傾向があります。

異なる2つの企業に共通する、企業の魅力を伝えるという課題―――

インタビュアー

企業の魅力を伝えるために、どのようなことをされていますか?

玉川工業㈱
河村さん

弊社が作る部品は1000分の1ミリ単位の寸法を求められるすごくシビアな製品もあり、正確さが求められます。全てを機械で自動的に作っていると思っている人が多いのですが、実際には人の手が加わり、作り上げられています。厳しい基準に沿って自分たちで部品を作り上げる達成感を伝えるようにしています。

玉川工業㈱河村さん

㈲浅野保温
浅野さん

導入として、通勤時間が短いことや地元で働くことの魅力を伝えています。また、水道管が凍り水が止まったり、結露のために工場が水浸しになるなど、生徒にとって身近な事例を出しながら、トラブルを防ぐことが弊社の意義なんだと伝えるようにしています。

(一社)アスバシ
小柳さん

お話いただいたように、何ミリの世界の話のように、会社の強みと仕事のリアリティを伝えるのはとても大切です。さらに、実際の業務につながるような体験の機会を設けると魅力がもっと伝わりやすくなります。
例えば、製造段階の一部分だけでも体験したり、お客様対応の一部としてお茶を出してもらうなど、簡単でもいいので実際の仕事の一部を担う体験をすることが重要です。自分が体験したことが、なぜ会社のプラスになるのか、どのように社会や人の役に立つのかを伝え、仕事の延長線上に自分たちの生活がつながっていくことを実感させることが効果的です。
また、インターンシップ受入時に、高校生から自社の魅力を聞かれることもあると思います。社員自身が会社の魅力を捉え直すキッカケになりますので、インターンシップを受け入れる際には、会社の魅力について改めて考えてみてもよいかもしれません。

インターンシップは社員全体で取り組む―――

インタビュアー

高校生とのインターンシップは、会社の中でどなたが担当されているんですか?

玉川工業㈱
河村さん

最初のオリエンテーションを私が進め、その後、工場に関しては製造部長と一緒に回り、各担当者から順に製造工程を説明していく形です。なるべく若手から熟練まで多くの社員が関わるようにしています。
特に、弊社の製造部門は外部との接触が少ないので、こういった機会を活用して社員の成長につなげていければと思っています。

㈲浅野保温
浅野さん

弊社では、最初は一から十まで全部私が行っていたんですが、あまりにも大変だったので、徐々に社員に引き継いでいます。今では、業界の実情や社会人としての心構え等は私から話し、図面や製造に関しては社員やパートさんにお願いしています。
担当の社員同士で、生徒でも作れるケースやごみ箱について主体的に話していることもあるので、社風にも良い影響があったかなと思います。

㈲浅野保温浅野さん

(一社)アスバシ
小柳さん

企業によっては、担当者が生徒を受入れしている間、仕事が止まってしまうので困る、という方もいらっしゃいますので、お二人のように受入担当を分散して行うことは大切です。
また、企業がインターンシップを受け入れる目的に合わせて、担当する社員を選んでいただくことも良い手法です。例えば、若手のリーダーを育成したいと考えている場合、生徒を仮想の部下と想定してリーダーシップを学ばせたり、商品開発部門で高校生目線の意見や流行りの情報を得たり、目的次第でいろいろな受入れ方が出てきます。
浅野保温さんのように、生徒が実際に持って帰れる制作物を渡すのも効果的です。お話を聞いて終わるのではなく、例えば学校で使えるものがあると、企業のことが記憶に残りやすいですからね。

生徒と企業の間にある大きな壁―――

インタビュアー

高校生と担当者のやりとりの中で困っていることはありますか?

玉川工業㈱
河村さん

今年、【公募型】で来てくれた生徒さんはすごく積極的だったので、大きな問題はありませんでしたが、過去には年上とのコミュニケーションが苦手な生徒さんが参加されたこともあったようです。

㈲浅野保温
浅野さん

【必須型】で参加される生徒のモチベーションへの対応が難しいですね。なるべく学校の勉強が仕事の役に立つように、今の生活や社会での活動のつながりを意識して進めていますが、なかなかうまくいかないです。

(一社)アスバシ
小柳さん

特に高校生が「安心」できる環境づくりが非常に大切です。例えば、社員みんなが笑顔で挨拶をしたり、困っていることがないか細かく声掛けを行うと、高校生が次第に安心してお話しできるようになります。中には、飲み物を飲んでよいかを社員に聞くことができずに、熱中症になってしまったケースもあります。とにかく周りの大人からコミュニケーションをとることを心がけてください。
また、高校生から各担当者へのインタビューの場を設けるのもひとつです。テーマや項目を事前に設定しておけば、コミュニケーションが苦手な生徒でも迷うことなく話すキッカケを作ることができ、関係構築につながる場合があります。

イメージ

高校生向けのインターンシップに悩む企業へ―――

インタビュアー

最後に、現在、高校生向けのインターンシップを実施することに悩んでいる企業さんへメッセージをお願いします。

玉川工業㈱
河村さん

「まずは生徒さんを受け入れる」と決めてしまえばよいのかなと思います。意外と何とかなるものです(笑)。いざ始めると色々な改善点が出てくると思いますが、そこも含めて会社の今後につながっていくと思います。弊社でもそうですが、短い期間のインターンシップから受け入れていくことから始めると良いと思います。

㈲浅野保温
浅野さん

社員数が少なく、高校生を受け入れる余裕が無くて取り組めていない企業はたくさんあると思います。ただ、そんなに余裕がない状態だと新卒を受け入れることも難しいと思うので、無理にでも時間を作って、新しく入ってくる人のために時間を作ることは大切だと思います。そうすることで若手社員の受け入れの練習にもなりますし、受け入れること自体が既存社員の意識改革にもつながると思います。

(一社)アスバシ
小柳さん

学校でもキャリア教育に向けた地元企業との連携も進んでいますし、今はインターンシップをサポートする仕組やコーディネーターもいます。まずは、採用ではなく地域貢献や社内の活性化として始めてみてください。

高校生向けのインターンシップの導入は、企業にとって新たな可能性を広げる大切な取り組みです。高校生が進路を考えるキッカケとなるように、自社の魅力を効果的に伝える工夫を重ねて、実際の業務を体験してもらいましょう。高校生の未来を考えることが、企業にとっても未来の人材確保や成長につながります。
アイチータ