あいちの職業訓練最前線 ―中小企業の成長力を上げる人材育成事例紹介―
世代間で異なる就業意識、IT化やグローバル化の波―― この変化の激しい時代に、中小企業が欲しい人材を確保し、成長していくカギはどこにあるのか。職業訓練学を専門にする谷口雄治先生とともに愛知県内の中小企業経営者へインタビューを行い、検証していきます!
インタビュアー
Interviewer
谷口 雄治先生
職業能力開発総合大学校・能力開発学科教授/博士(教育学)
専門は「職業訓練学」。1976年、労働省所管職業訓練大学校卒業。職業訓練研究センター研究員、日本労働研究機構研究員等を経て、現職。様々な業界の中小企業経営者へのヒアリング、フィールドリサーチを行い、中小企業における雇用・人材育成の実態の把握と、課題の分析に取り組む。
主な著書
『もうひとつのキャリア形成』職業訓練教材研究会(分担執筆,主要著者平沼高,2008)
『熟練工養成の国際比較』ミネルヴァ書房(分担執筆,主要著者平沼高,2007)
『働く人の「学習」論』学文社(分担執筆,主要著者田中萬年,2007)
メディア出演歴
日本テレビ『世界一受けたい授業』出演
あいちの
職業訓練
最前線
vol.01
中小企業は「目指したい将来像」に合わせて
人材育成プランの立案を。
谷口 雄治先生 職業能力開発総合大学校・能力開発学科教授 / 博士(教育学)
中小企業にはプロフェッショナルを育てる土壌がある
中小企業における人材育成について考える前に、まずは中小企業ならではの雇用環境について整理しておきましょう。労働者と組織の間で部署の異動など、様々な取引が行われながらも、労働者が安定的に勤務を続け、年功賃金を受け取るような労働市場を「内部労働市場」と言います。他方、「外部労働市場」とは、労働者は内部組織ではなく、様々な企業との間で交渉し、職場を変えながら、実力に応じた報酬を受け取るモデルを指します。一般的に、前者は大企業、後者は中小企業の雇用環境に当てはまります。ですから、ひとつの仕事をやり遂げたいと考える労働者は、中小企業に身を置くことがおすすめです。
やりたい仕事が明確なら、中小企業はベストな選択肢
自分で考えて行動する機会の減少が、人材育成の難しさにつながっている!?
「やりたい仕事に就ける」可能性が高い中小企業。しかし、教育システムを整備する体力のある大企業に対し、中小企業ではノウハウや定型化されたマニュアルが存在していない場合が少なくありません。こと、モノづくり中小企業においては、特殊技術を強みとしながらもその継承が上手(うま)くいかない―― これは、昨今の大きな課題となっています。それだけではありません。「やりたい」という意識自体が若い世代で低下しているという見方もあります。与えられた教育プログラムは的確にこなす真面目な人材が多い中、「指示待ち」状態の人材が増えていることも、継承が滞る原因なのです。能動的に技術を獲得しなければ、やりたい仕事に就くことも、オンリーワンの技術が身につくチャンスを手にすることも難しいでしょう。
特殊技術の継承方法が課題となる場合も多い
人材は、競争力の源泉。企業のビジョンにもとづいた人材育成を!
ニッチ市場を占有し、競争力を高めながらさらなる成長を目指したい。そう考えながらも、雇用のミスマッチや、人材育成・能力開発のノウハウ不足で、頭を抱える中小企業経営者はたくさんいます。先に述べたように、中小企業は外部労働市場の中で、実力のあるプロフェッショナル集団となれることが魅力です。ですから、定期採用・人材育成を諦めてはいけない。社員の向上心を育て、バックアップしながら未来に向かっていくために、具体的な将来像に合致した人材育成プランを立てること。それこそが、これからのモノづくり中小企業が生き残るカギなのです。
社員の向上心を育てるバックアップ方法も必要
次回から全5回に分けて、 谷口先生と一緒に訪問した県内企業の訪問記を掲載していきます。
ちょっと変わった人材育成の取り組みや、 アイデア満載の研修プログラムが続々登場!!お見逃しなく!!
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