vol.1
人材の確保や従業員の人材育成など、多くの中小企業が共通した悩みを抱えるなか、
先進的な取組みを行う様々な企業の担当者のディスカッションを通して、
解決に向けたヒントを提供します。
今回のテーマ
座組みと仕組みでヒトを育てる!
今回、お話いただいたのは、匠(たくみ)の高い技術で良質の木造住宅を提供する豊明市の住宅メーカー「株式会社コスモ」と、多くの女性が現場で活躍する愛西市の製造メーカー「名古屋エアゾール株式会社」。
経験や知識の異なる人材が一緒に働くモノづくりの現場では、どのように人材育成を行い、どのようにモチベーションを創出するのかを話し合っていただきました。
それぞれの道で愛知に根付いてる2社
- まずは会社の紹介をお願いします。
- 鈴木氏
- 創業者である父が昭和50年に大工仲間5人とともに名古屋市千種区で始めた会社がはじまりですが、木材を加工するときの騒音などが問題となり、平成元年に現在の豊明市に本社を移転しました。現在は注文住宅、リフォームを中心に、営業から設計、工務まで社員15名ほどで、地元に根付いた企業を目指しています。日本は国産の木がたくさんあるので、今は木造建築というものが見直されています。特に弊社では、伝統工法に最新の技術を融合させてより快適で安心できる家をお客様に提供しています。
- 丸山氏
- 実は弊社も創業は名古屋市千種区で先代が一人でヘアスプレーなどを作る会社を始めましたが、その後の御縁で昭和49年に本社を今の愛西市に移転しました。ガスの力で液を霧や泡の状態にして噴出させる「エアゾール」を製造しています。弊社の売りは「エアゾール製品」ではなく「エアゾール機能」。食品などにも広く使われている海外に比べ、日本の市場は非常に小さいため、20年ほど前からエアゾールだけではなく、化粧品や雑貨なども取り扱いいろいろな窓口をつくりやっています。生産量や種類の増加など事業展開に伴い、10年ごとに10名程度増え、今は40人ほどが働いています。
職場の現状と課題
- 従業員の構成と仕事の内容について教えてください。
- 鈴木氏
- 3~4年ほど前から女性が増えており、今は大体半々くらいになっています。現場はもちろん男性が多いですが、住宅を作るときのアイデア、例えばキッチンなどは女性からの意見を積極的に取り入れて設計しています。今いる中で一番の若手は24歳、最年長は65歳くらいですね。「分業」をあまり行っておらず、様々な仕事を受け持ってもらっています。
- 丸山氏
- 弊社は7:3の割合で女性の方が多いですね。エアゾールの製造には、とても細かい作業なので、女性の方が向いていると思っています。現在は製造だけではなく全ての部門に女性がおり、基本的に主な作業のすべてに女性が携わっていますが、業務ローテーションなどを行わず、それぞれがエキスパートとして従事しています。年齢構成は10代から70代まで。中には勤続35年間のベテランも元気に働いてくれています。
- 現場での課題はありますか?
- 鈴木氏
- 正直なところ、従業員の入れ替わりが激しいのは悩みです。ウチには創業当時から腕が確かな職人がいます。その技術を伝承する担い手として、大工育成塾などの採用などもしてきましたが、専業制ではないが故に、時には大工を目指して入社をしても、イベントなどを手伝ったりしてもらうこともあり、苦手意識から離職につながってしまうところがあるのではないかと考えています。
- 丸山氏
- 長く務めていただける方がいるのはうれしい反面、人事も含めた制度面が長年の悩み課題でした。私自身が5年くらい前に製造の現場に入り、何となくふわっとしていたルールなどをハッキリさせたい、働いている方に名古屋エアゾールという会社をもっとしっかりと知ってもらいたいという思いが湧いてきました。
課題解決に向けた座組みと仕組み
- 人材育成として取り組んでいることはありますか?
- 鈴木氏
- 近年の大工には、昔と違い、設計されたものをいかに完璧に作り上げるかが求められています。同じ親方に何年もついて教えてもらう昔ながらの教育方法もありますが、どうしても視野が狭くなってしまうので、現在は新人を3か月程度の工期を基本に、いろいろな大工さんに現場単位で入ってもらい、それぞれの大工さんの良いところや様々な技術を学んでもらっています。やはり最初はなかなか仕事にならず、一人前になるまで時間がかかりますが、先輩大工さんがいろいろと気を使ってくださっているおかげでうまくいっている部分もあります。
- 丸山氏
- ここ数年、助成金などを活用しメンター制度を導入しましたが、はじめはうまくいきませんでしたね。歳が違うといっても同じ20代ですので、やはり教えるということ自体に慣れておらず難しかったようです。どちらかというとメンターの方がつぶれてしまうことが多かったですね。そこで、メンターの在り方などもみんなで考え、現在は、仕事はみんなで教え、メンターには精神的なフォロー役として毎日の就業後の5分くらい世間話などをして不安を取り除く役を行ってもらっています。メンターにも責任を与え、とりあえずやれることを一緒にやっていこうと切り替えたところ、今はお互いに良い経験になったようで頑張ってくれていますね。
- 従業員や業務が異なる中、モチベーションを保つためには?
- 鈴木氏
- 大工さんは、一度、現場に出てしまうと情報共有が難しいので、3か月に一回の「大工会」を開催しています。「大工会」では、工期などの情報を共有しつつ、お客様からのアンケートや営業社員からの話を伝えるようにしています。若手はもちろんベテランでも、お客様の感謝を伝えられるとモチベーションが上がるようです。新人には、親御さんに本人が携わった現場を見ていただき、みんなでサポートできる関係を構築しています。
- 丸山氏
- 近年、メッセナゴヤなどの展示会に出展するようになりました。出展自体をひとつのプロジェクト化し、社内で実行委員を構築し作業を行っています。ふだんとは異なる仕事をやり遂げたことは自信につながり、モチベーションのアップになっています。また、展示会では、現場の社員達がお会いすることのない企業が来場するので、自社の事業を異なる角度で再認識する良い機会になりました。正直社内向けですね(笑)
今後に向けて
- 人材育成について、今後、取組みたいこと
- 鈴木氏
- 様々な仕組みづくり、営業などの一部のマニュアル化など、まさにその準備をしている最中です。それは本当に早急に行いたいですね。また、女性社員も含めた打ち合わせ等も今以上に増やしていきたいと考えています。
- 丸山氏
- 現場のルールの見える化をしていきたいと思っています。以前、「会社をよくするための課題」を話し合っていたころ、「無駄なおしゃべり」が多いとの話になりました。現場のみんなで「おしゃべりゼロ」のルールを掲げたところ、効果が出すぎて、誰もしゃべらなくなって、、、結局、業務時間中は業務に関係あることはお話はしても良いことにしています。そのような従業員の主体性の見える化をもっと伸ばしていければと考えています。
対談後記
業種は異なるものの、さまざまなアプローチでコミュニケーションを醸成している両社。ベテランはもちろん、新人たちにも、さまざまな座組みや仕組みを活用して、活躍の場を広げることで、風通しの良いモノづくりの現場ができるのかもしれません。
今回から全3回に分けて、県内企業の人材育成の現場を取材していきます。お見逃しなく!!