vol.2
人材の確保や従業員の人材育成など、多くの中小企業が共通した悩みを抱えるなか、
先進的な取組みを行う様々な企業の担当者のディスカッションを通して、
解決に向けたヒントを提供します。
今回のテーマ
社員の個々の能力を活かす人材教育！
今回、お話いただいたのは、「企業の役に立ちたい、働く人の力になりたい」とあつく語る名古屋市の総合人材サービス会社「株式会社クロップス・クルー」と金属加工にはかかせない熱処理の中でも特殊な技術を持つ安城市の「株式会社メタルヒート」。
異なる事業を行う両社が、社員の能力の活用方法について話し合っていただきました。
株式会社メタルヒート 総務部総務課 兼 人事部人事課 兼 海外事業部業務課 リーダー 今枝良介氏
事業分野が全く異なる２社
- まずは事業の紹介をお願いします。
- 幅氏
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当社は名古屋鉄道グループが資本参加して誕生した企業です。名古屋市に拠点を置く派遣会社としてテレオペ、接客販売など未経験からスタートできるお仕事や御経験・スキルをいかせる事務職種、また高い技術力を誇る県内メーカーへの技術者派遣など多職種にわたり展開して参りました。また現在は東海地方の企業に密着した転職エージェントとして地元での就職にこだわりたい人や、Uターン転職を希望する方々の支援にも力を注いでいます。
株式会社クロップス・クルー
キャリアアドバイザー 幅さやか氏 派遣スタッフのキャリアアップに向け、確かな技術力と熱いハートで心を込めて支援するキャリアアドバイザー。
保有資格：GCDF-Japanキャリアカウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士、産業カウンセラー
- 今枝氏
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弊社は金型、自動車部品、半導体製造機械部品、希土類、触媒などの金属製品の熱処理を行っております。最近は発電関係も多いですね。金属があるところは全てお客様なので、業種を問わず様々な企業からお仕事をいただいております。
株式会社メタルヒート
総務部総務課 兼 人事部人事課 兼 海外事業部業務課 リーダー 今枝良介氏 部署移動の少ない同社複数の部署をまたぎ業務にあたる若きホープ。教員免許で習得した知識を活かし、“わかりやすい熱処理”を外部へ発信している。2級金属熱処理技能士。
- 会社の特長を教えてください。
- 幅氏
- 私どものお客様は派遣先企業、そして御登録いただいている派遣スタッフ・キャンディデイトの皆さまです。企業のニーズ、求職者の御経験や価値観も人それぞれ。望まれる方が望まれる企業に行っていただけるようにマッチングすることが我々の仕事となります。私たちは経営理念の「人のこころと人生を豊かにすることを創造する企業」をモットーに、派遣先企業のニーズにお応えしつつ、スタッフの将来が豊かで明るくなるお手伝いをしたいと考えています。
- 今枝氏
- ほとんどの金属の加工には熱処理が必要です。ただ、熱処理というと、残念ながら熱くて危険と、イメージがあまり良くないのが現状です。しかも、処理の前後で硬さなどの機能は変化しますが、その効果が見た目にはわかりません。私達は、これらの問題に対応するために、社内のあらゆるものの「可視化」に取り組んでいます。例えば、弊社では「世界一綺麗（きれい）な熱処理工場をめざす」を会社の基本方針にしています。中身の見えない熱処理だからこそ「管理力＝熱処理力」と捉え、工場に展望式見学ルームを設けて綺麗に管理された工場をお客様にご覧いただきます。清掃にはとても力を入れており、毎朝全社員で床面から設備まで清掃をします。また、社員の能力を可視化するために製造スタッフはもちろん、電話を取るスタッフまで全社員熱処理技能士検定取得を推し進めております。全ての施策がお客様に安心していただくことが目的です。
教育内容は異なるが、実はリソースが同じ自社の社員！？
- どのような育成プログラムに取組んでいますか。
- 幅氏
- 派遣事業の場合、スタッフ登録時に仕事の思考やスキルをお聞きし企業にマッチングしますが、就業してからスキルアップに目ざめることも多くあります。その際には営業担当が入念にヒアリングし不安を取り除きます。具体的には「職場で更に活躍するためにCADを勉強したい」というスタッフさんに対し、弊社の技術者養成を担当するCAD講師の特別授業を企画し、派遣先とスタッフ双方に喜んでいただきました。またWEBスキルを身につけたいとリクエストがあった際は、特に研修プログラムはなかったものの当社の社内SEに特別講師を依頼し学習機会を提供したこともあります。対面での研修やWEB学習など定型の教育プログラムにとどまらず、その時々の御要望に様々なバックボーンを持つ弊社の従業員も有能な講師として活躍します。
- 今枝氏
- 弊社では、各従業員の教育の予定や取得状況を表にして分かりやすく「可視化」し、人事部で管理をしています。金属熱処理や危険物取扱い、フォークリフトや玉掛けなどの業務に必要な公的な資格や検定から、完成検査員認定や各設備・機器の取扱認定者などの社内特定作業、ほかにも語学や経理など自己啓発支援制度を一覧化しています。これらはオープンにしているのでお客様にも御覧いただくことができます。やはり、これもお客様の安心感に繋（つな）がる施策の一つですね。
また、熱処理業界には教育機関が少なく、未経験の方に熱処理を“わかりやすく”教えられる講師がほとんどいなかったので、外部の方に熱処理を「教える」金属熱処理スクールを展開しております。近年では地元の小学生や高校生のキャリア教育の一環として、また海外からも日本の熱処理を学びたいと受講される方もおり、多方面で活用されております。外部の方に教えることで講師自身のモチベーションが上がり、知識の向上にもつながっていると思います。
共通するのは「とりあえず、やってみて」
- 中には、学習が苦手な人などいませんか。
- 幅氏
- もちろん、いらっしゃいますよ。弊社はWEBを活用した教育プログラムも受けられるので、まずは15分～30分程度の短い時間で習得できるプログラムを伝え「とりあえず、やってみて」と背中を押します。たとえ業務に直接関係がないことでも、まずやっていただくことが次のステップに繋（つな）がっていくことがよくあります。知識の吸収は人生の楽しさ、豊かさに繋（つな）がると思うので、まずは楽しんで「やっていただく」機会を御提供したいですね。
- 今枝氏
- 職人さんの中には教育に難色を示す方もいますよ。でも、実際、受けてみると「やはり良かった」との言ってもらえることが多いです。きっかけを与えることの大切さということは実感しますね。
今後に向けて
- 人材育成について、今後、取組みたいこと
- 幅氏
- これは私の理想なのですが、スタッフさん同士の交流の場をもう少し増やしたいと思っています。このオフィスがスタッフ皆さんの交流の場や憩いの場になり、スタッフさん同士でいろいろな悩みなども相談し合えるような場所になると嬉（うれ）しいですね。人と人が集うことは大切な人材育成の原点だと思います。
- 今枝氏
- 現在取り組んでいる最中ですが、全社員が何らかの役割をもって取り組める委員会制度を作っていきたいと思います。現在もISO推進に改善提案の委員会がありますが、業務に直結する委員会だけでなく、フットサルや懇親会などの社員のコミュニケーションの場を企画するような委員会や社員の福利厚生を向上させる委員会なども増やせると、一人一人の社員がより高いモチベーションを持って働ける会社になると考えています。
対談後記
自社の重要なリソースである従業員を巧みに活用し人材育成を図る両社。もちろん、時には変化を好まない人もいるかもしれませんが、「とりあえず、やってみる」という前向きな姿勢が従業員の意識に変革をもたらすのかもしれません。
次回も、県内企業の人材育成の現場を取材していきます。お見逃しなく！！