第三回
やりたくない「リーダーの仕事」どうする?
「リーダー」「リーダーシップ」という言葉で、あなたはどんな人の姿をイメージするでしょうか。おそらく、「先頭に立って引っ張る人」ではないでしょうか。
たとえば、学生時代の部活動で言えば部長みたいな人。部員に対してやるべきことを指示・命令したり、アドバイスをしたり、時には怒ったり。リーダーには、このようなイメージがあります。
こういった立ち振る舞いが得意な人もいると思います。一方、ちょっと内気だったり、大きな声を出すのが苦手だったりする人にとって、「先頭に立って引っ張るリーダー」は重荷でしかありません。
しかし、ある程度の年齢や経験を重ねると、リーダーや管理職をやらざるを得ないことがあります。先頭に立つのが苦手なのに、やらなければならない場合、どうすればいいのでしょうか。
冒頭にもお話ししたように、かつてのリーダー像は「先頭に立って引っ張る人」でした。自分の成功体験や「こうすればいいのではないか」という考えに基づいて指示命令を出す。それが、リーダーの役割でした。
しかし、かつての右肩上がりの時代とは異なり、現代は、先行きがどうなるのか、見通しが立ちにくい時代です。経済的にもそうですし、特に近年は自然災害や想像もしなかった感染症の広がりなど、未来がどうなるのかすら予測ができません。このような状況では、ある特定のリーダーの経験値は、必ずしも正解とは限りません。
正解がみつけにくい、現在のような状況下では「先頭に立って引っ張る」リーダーシップよりも、ざっくばらんに意見が言い合え、その時々の状況に応じて解決策をみんなで考え、合意形成を図っていくような、「フォローするリーダーシップ」のほうが求められるケースもあるのです。
そういう意味では、先頭に立って引っ張る、強いリーダーシップはあまり必要なく、特別「優れたリーダー」である必要もありません。むしろ、「かつてのリーダーシップは苦手」と思っている人のほうが向いているのかもしれません。
目の前の課題を解決するための手段をリーダー一人が考え、先頭に立って指示命令を出すのは大変です。そんなリーダーは誰もがしたくありません。それよりも、解決策をみんなで考え、解決していく場づくりのほうが大切。「一人で頑張る」よりも、チームの仲間とアイデアを出しながら「楽しくはたらく」ことに意識を向けられる人が、これからのリーダーなのです。
【筆者プロフィール】
NPO法人しごとのみらい 理事長竹内 義晴 氏
1971年生まれ。元はプログラマー。ギスギスした人間関係でストレスを抱える中、管理職を任されコミュニケーション力の必要性を痛感。その経験から、コミュニケーション心理学やコーチングを学ぶ。現在は「楽しくはたらく人を増やす」を活動テーマに、コミュニケーションの問題によって生じる職場の課題を解決し、楽しく働くことができるようコミュニケーションの講演・研修、講座、コーチング、カウンセリングに従事している。