vol.5
繰り返しの作業が多く、
とかく、システム化・平準化を目指しがちな製造現場において、
“マニュアルの無い現場”で、技能の向上・成長を続ける企業があります。
今回の取材協力 株式会社ナツメ
- 事業内容
- 全国の自動車メーカー、溶接機メーカー、家電メーカー等をユーザーとした抵抗溶接分野の電極をはじめ、銅合金を素材とした非鉄金属製品の製造
- 会社の強み
- ユーザーの溶接ロボット導入等により、ますます多様化・高精度化が要求される電極部の加工などに、当社の技術力をいかんなく発揮することができます。
ここに注目! 「お仕事の魅力」
- 高精度な加工を行う藤本さんの職場では、繰り返し作業から育まれる手先の勘がものを言う!
- 素材と機械の間に生じる微妙な齟齬感・バランス感は、経験からでないと修得できない!
- 「まず、やってみる!」 これは、インターンシップから入社、そして現在に至るまでクラフトマンである藤本さんのポリシーであり、またナツメの社風でもある!
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朝イチバンの「製造図面置き場」直行、加工現場の1日は、ここから始まります!
我が社の加工現場には、「製造図面置き場」が設けられており、そこには、各課で生産すべき受注品・数量・納期を記した受注票と、加工の元となる加工対象素材が保管されています。
私の1日は、この図面置き場に足を運び、その日の作業内容を把握することからスタートします。 -
素材は、まさに“原石” 切り出されたパーツを見ながら、完成物への想いを馳せます!
電極加工の元となる銅が素材棚に並ぶ様子は、私たち技能者にとって、正に原石置き場! 自身が担当する加工はもちろん、先輩や同僚が担当する素材を見ながら、それが、どう加工されるか?どこで活躍するのか?を想像できるようになったのも、9年目を迎えた自身の成長と実感できます。
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旋盤加工は、最初が肝心!
私の担当する旋盤は、円柱状の材料を回転させ、バイトと呼ばれる刃ものを当て削る加工する技術です。ワーク(加工対象素材)の中心と、バイトの刃の高さを同じに固定します。この位置をしっかり出さないと、バイトの破損や加工精度の低下、旋盤自体の故障につながるおそれがあるため、最初にすべき、非常に大切な工程です。
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旋盤加工は精度が命! 知識・経験を総動員!
NC旋盤(数値制御装置の付いた旋盤)を用いるため、詳細な数値を入力すれば自動で削ってくれますが、この際に必要な操作「切り込み(ワークに対して切削する量)」と「送り(ワークに対してバイトを平行移動させる距離)」は、精度を大きく左右する為、知識・経験を総動員し、数値を割出します。
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いよいよ仕上げ!
基本は、焦らず・慌てず・丁寧に!仕上げの精度を出すには微調節が必要になり、最後はやはり、人の技術的感覚に大きく左右されます。例えば、傾斜をつける加工の場合、雄(凸)・雌(凹)の接合面にガタやスキが出ないよう、削り面をムラなく密着させるように高度な技術や経験が不可欠です。
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加工の個人戦だが、モノづくりの現場は団体戦!
小ロット・多品種を強みとする我が社には、細かいマニュアルは存在しません。1つ1つ仕様の異なるオーダーをマニュアル化し頭から入れても、身に沁みないのです。そのため、先輩やベテランに気軽に相談し、また、やり方を盗ながら、自分の身体で覚えた方が、圧倒的に早く習得できるものです。
個人個人の技能や経験に限界はあっても、それを共有できれば無限大! 我が社に根付く、“まず、やってみる!”社風は、一見非効率に見えて、私たち技能者の意欲を、どこまでも高めてくれます。
“創意工夫”こそ、モノづくりの原点。まず、やってみる! そして考える。マニュアルレスは、自問自答を大いに育んでいます。
例えば、受注内容を掲出した「製造図面置き場」には、仕様図面のみで、使用する工具や工法等は、担当者自身で考える必要があります。
如何に、高精度に加工できるか?如何に、単工期で仕上げられるか?まず、やってみて、仮にエラーがあっても、責任追及しない風土と、それを逐一ファイリングすることで、風化させない仕組みが共存しています。あらゆる創意工夫こそ、ナツメの原動力となっています。